お店を開いてから初めて、インタビューを受けた。
こんばんは!
だいぶ寒くなってきて、今朝もぬくぬくとした桃源郷から、まるでラスボスが足を組みながら待ってる氷の城じゃないかってくらいの世界へ身体を導くのに苦労した。
さて、先日インタビューを受けた。
このお店を開いてから初めての出来事で一瞬思考が停止していたけど、熱いインタビュアーの視線とよく分からない圧迫感で現実に引き戻された。
なぜ、こうなったかは一週間くらい前にさかのぼる。
出張から車でお店へ帰ってくる途中に電話が鳴った。
もうお店の営業時間はとっくに過ぎているはずだったが、時間を見てみると就業時間まで「まだ」1分も残ってる。
車を安全に停車させて、折り返しかけてみると、若い女性の声がする。
電話番号から見てお店の近所からの着信だったし、営業からの電話ではないであろうと踏んでいたのとは裏腹に、「いつもお世話になっております。こちら...」と悠長に話し始める。
どうやって断ろうか、なんて考えているうちに、「それで、●月×日の△時15分頃のご予定は如何ですか?」と言い出す営業。
あれ、ちょっと、なに、何でそんなに話が進んでるの?気が付いたころには完全に営業に言葉巧みに乗せられ、一週間後のある時間によくわからない約束をしてしまった。
担当の名前もろくに分からないまま、当日は宜しくとのことで、電話を切った。
凄まじい営業力だったのか、まるで優しい保健室の先生みたいな声に絆されてしまったのかはよくわからない。
ただ、「約束をしちゃった」ことだけは、覚えている。
言われたことだけをひたすらに書きなぐったメモ紙をカバンの淵に突込み、全然途切れない車の列に戻り、お店に戻った。
と、ここで誰かの号令で、7人が「宜しくお願いします」と一斉に挨拶してきて、再び現実に戻る。
僕ってこんなに自分の世界に逃げ込むの上手だったっけ。
って、え、待て、8人って、待てよ、そんな、この小さな店舗に8人なんて入れn...サザエさんのエンディングじゃないんだからな!この店はあんなの風に伸びたりしないんだぞ。
そういえば、ここを開いたときに「インタビューします商材」の電話が鳴ったっけな。
あの時は、危うくGoサインを出しそうだった。(再び自分の世界へ)
全然、目の前に立ちはだかるインタビューに意識が行かない。
緊張とも言えない変な雰囲気。
誰かが少しでも歩いたら、絶対に這いつくばってる人の指を踏む。
だって、メモを床で取ってるんだもん。
ん?床?床???
目の前には8人いたうちの5人が床に紙を敷きながら何やら熱心にメモを取ってる。
「あの、机、つくぇを使ってください・・・」との必死の言葉にも全然耳を向けてもくれない。
ここで、ようやく彼らの正体を知る。
「小学生だ―。」
彼らはお店の近くの小学校に通っている小学生だった。(そりゃそうか。)
アタフタしていると、またドアが開く。
「これ以上は無理だぁあああ、お店が、お店がつぶれる!助けてくれぇ!!!」なんて思っていると、シャッター音がした。
そう、この有様を写真に収めているのだ。
絵面が悪すぎる。撮るなら撮るって言ってよ!せめてピースくらいしたのに。
最悪である。小学生の半数に床でメモを取るように強いているみたいじゃないか。
ピースなんてしていたら、もっと最悪だったな。(不幸中の幸い)
聞かれたこととすれば、「お客さん(と接するとき)にはどんなことを気を付けていますか?」とか、「仕事をしていて嬉しかったことはありますか?」などだった。
7人がそれぞれ、事前に考えてきてくれたであろう、質問を一通りし終わると、お店にあるものを見て回り、「これ何、あれ何?どこで買ったの?質問タイム」が始まった。
なんなんだこれは。。。
でも、みんな一様に目を輝かせて質問してくれるので、無下にはできない。。。
ん、この乾電池?これは百均で買ってきた安物のやつだよ。何の話?
最後に、マザーボードを見せたりして説明をした後、帰る準備を始めた。
引率の方が、「最後に質問ある人ー!」というと、「俺ここに住みたい!」と。
おい、腕を引っ張るな、服伸びる。
いや、気持ちはうれしいけど、気持ちだけがいいな。
小学生軍団は、最後にありがとうございました、と言い残し、一人だけ、「Have a nice day!」とおしゃれに言い放ちお店から出ていった。
嵐のごとく過ぎ去っていく小学生軍団、再び異様に静かな空間に戻る店舗。
そのとき、メモ帳の存在を思い出した。
あれ、あんなに人数来るって聞いていたかな?
カバンをゴソゴソと漁ってみるとあった。そうだ、カバンの淵に入れたんだ。
あれ、4人くらいって書いてあるし、そもそも10分くらいのインタビューって書いてあるぞ。
詐欺か、詐欺なのか!
ただ、思い返してみると、彼らはみんな男の子で、興味津々だったのを見ると、希望制だったのかな。
嬉しいな。
でも、あれでよかったんだろうか。
不安になる。
そして、彼らの目にはどうやって映ったんだろう。
少しでも興味を持ってくれただろうか。
そんなことを思うこと自体が烏滸がましいのだろうけど。
ちょっとしみじみ。
ふと袖を見ると、「ここに住みたい」と言った少年が付けたであろう、鼻水が。
あああ、なんちゅう、置き土産。
では!